看護師の奨学金は4種類ある
学生のときは、どれも同じ「奨学金」と呼ばれています。けれど貸してくれた相手が誰かで、年限の途中で辞めたときの結末はまったく違います。見分ける場所は1か所、契約書の一番上にある貸主の名義です。
4つのちがい
| 貸主 | 労働基準法16条 | 免除の数え方 | 別の職場へ移ったら | 利息 |
|---|---|---|---|---|
| 就職先の病院・医療法人 | 問題になる(貸主が使用者) | その病院で決められた年数。1日足りなければ全額、という定めが多い | できないのがふつう | 無利子が多いが、遅延損害金の定めがあることがある |
| 都道府県・市町村 | 問題にならない(自治体は使用者ではない) | 条例と要綱で決まっている。勤務先と年数に応じて免除額が積み上がる形がある | 同じ都道府県内の指定施設なら通算できる制度が多い | 無利子。延滞したときだけ延滞利子が付く |
| 日本学生支援機構(JASSO) | 問題にならない(就職先と関係がない) | 勤務による免除はない。返還が難しいときは減額返還・返還期限猶予 | 就職先を変えても返還条件は変わらない | 第一種は無利子、第二種は利息あり |
| 看護学校・養成所 | 問題にならない(学校は使用者ではない) | 学校の規程による。系列病院への就職が条件になっていることがある | 規程による | 規程による |
表の内容は一般的な形です。実際の条件は契約書・条例・規程によって異なります。
① 就職先の病院・医療法人が貸すもの
貸主が、卒業後に働く病院そのものです。この形だけが、使用者と労働者の間の約束になります。だから労働基準法16条(賠償予定の禁止)が問題になるのは、この形のときだけです。「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」という条文です。
免除の数え方も特徴があります。多くの契約書は決められた年数に1日でも足りなければ全額という書き方です。5年11か月働いた人と、1日も働かなかった人が、返す額では同じになります。広島高等裁判所は平成29年9月6日の判決で、この点も返還請求を認めない理由の一つに挙げました。
このアプリの計算機で「就職先の病院・医療法人」を選ぶと、契約の形をたしかめる8つの点が出ます。
② 都道府県・市町村が貸すもの(看護師等修学資金)
病院が窓口になっていても、貸主が自治体になっていることがあります。自治体は使用者ではないので、労働基準法16条の問題にはなりません。そのかわり、免除の要件も返還の方法も条例と要綱で決まっていて、勤務先の病院が変えられるものではありません。
病院の奨学金と最も違うのが、免除の数え方です。東京都の看護師等修学資金では、令和7年4月から、勤務先と従事年数に応じて免除される額が次のように決まっています。
| 従事した先と年数 | 免除される額 |
|---|---|
| 都内施設で5年間 | 5万円 × 貸与を受けた月数 |
| 指定施設で5年間 | 7.5万円 × 貸与を受けた月数 |
| 指定施設で7年間 | 10万円 × 貸与を受けた月数 |
貸与月額は25,000円・50,000円・75,000円・100,000円の4段階で、貸与は無利子です。延滞したときの延滞利子だけが年3%(令和4年4月以降の返還にかかるもの)と定められています。返還は月賦・半年賦・一括払のいずれかを選べます。
出典: 東京都保健医療局「看護師等修学資金貸与事業」。条件は都道府県ごとに違い、貸与を開始した年度によっても異なります。ご自身の貸与元の窓口で必ず確認してください。
③ 日本学生支援機構(JASSO)が貸すもの
就職先とは関係のない貸与です。病院を辞めても返還の条件は変わりません。お礼奉公という言葉とは無関係で、返還が難しいときは減額返還・返還期限猶予といった制度で対応します。第一種は無利子、第二種は利息が付きます。
こちらの返済計画は、姉妹アプリの 奨学金まるごと返済プラン で、第一種と第二種を合算して計算できます。
④ 看護学校・養成所が貸すもの
学校は使用者ではないので、労働基準法16条の問題にはなりません。ただし、学校と系列の病院がひとつづきで運用されていることがあります。契約書の貸主の名義と、免除の条件に「特定の病院に勤務すること」が入っているかどうかを見てください。学校が貸主でも、免除の条件が「系列病院に◯年勤務」であれば、実質は①と同じ話になります。
契約書のどこを見れば分かるか
- 一番上の貸主の名義。「◯◯県知事」「◯◯市長」なら自治体、「医療法人◯◯会」なら病院です。
- 免除の条項。「本院に◯年勤務したとき」なのか、「知事が指定する施設に◯年従事したとき」なのかで、別の職場に移れるかが変わります。
- 雇用契約書と別の紙になっているか。借用書が別に無く、雇用契約書の中の一条になっているだけの場合、貸し借りではなく採用の条件と見られやすくなります。
- 返還の条項。「直ちに全額」なのか、勤めた期間に応じて減る書き方なのかを見ます。
契約のことを無料で相談できるところ
返還の約束が有効かどうかは、契約書と実際の運用を見ないと確かめられません。どれも公的な無料の窓口です。契約書と、辞めるときに言われた内容のメモを持っていくと話が早く進みます。
- 法テラス(日本司法支援センター)国が設立した法律相談の窓口です。収入と資産が基準以下であれば、同じ問題について3回まで無料の法律相談を受けられ、弁護士費用の立替えを利用できる場合があります。
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省)都道府県労働局や労働基準監督署に置かれている相談窓口です。予約なしで対面の相談ができます。退職をめぐるトラブルも扱っています。
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省)平日夜間・土日も受け付けている無料の電話相談です。日勤のあとや休みの日に相談したいときに使えます。
- ナースセンター(都道府県ナースセンター)看護師等の人材確保の促進に関する法律にもとづき各都道府県に置かれている、無料の職業紹介と就業相談の窓口です。費用はかかりません。
窓口の受付時間・連絡先・利用の条件は変わることがあります。最新の情報は各リンク先でご確認ください。
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